風土・衆声

運河シリーズ

    張炳堂は1970年代以降、野獣派の画風へと移行し、廖継春、郭柏川に続く典型的な野獣派画家となりました。この「運河シリーズ」の作品は、野獣派後期の作品です。筆致から色使いまで、この時期の画家自身の絵画における発展と成熟が感じられます。南国の鮮やかな日光の下、船の青、赤、緑、運河の白、河岸の黄色が互いに対照的に、強烈な線で力強い画面が構成され、遠景のモチーフとほのかなピンク色の雲が画面を和らげ、作品の層を豊かなものにしています。

    張炳堂

    台南生まれです。15歳の時に描いた『廟庭之晨』が第五回「府展(台湾総督府美術展覧会)」で異彩を放ち、政府主催の展示会に史上最年少で入選した台湾人画家となりました。張炳堂は大胆な色の塊と写意(フリーハンド)の筆遣いによる風景画を得意とし、台南の古跡、運河、寺院をテーマとした作品を多く残しています。初期の頃は濁った中間色を嫌い、強烈な原色、シンプルな線、素早い筆遣いで個性と生命力に満ちた作品を得意としていました。郭柏川の「中国の色彩」という考えが、張炳堂に題材と原色の呼応というインスピレーションを与え、その後は寺院の赤い壁、鮮やかな黄色と濃い藍色の釉薬瓦が張炳堂の代表的なスタイルとなりました。
    71.7 x 89.8 cm
    油彩、カンバス
    1990